血につながるふるさと 心につながるふるさと 言葉につながるふるさと……。ある詩人は、ふるさとをこのように歌った。ふるさとは精神の揺藍であり、心のオアシスである。
私は茨木で生まれ、茨木で育ち、茨木に本社がある会社に勤務して定年を迎えた。それから二十年の歳月を送り、今、春秋は既に高く、日は西山に傾いている。
人は多く、ふるさとを離れて人生を送る。ふるさとを偲び、ふるさとに思いを馳せる時、詩が生まれ、歌が生まれ、文学が生まれた。私は、終生、郷土・茨木を離れることはなく、詩も、歌も、文学も生み出すことはできなかったが、人生をふるさとの天地と共に過ごせたことを、誰よりも幸せであったと思っている。
我が郷土・茨木は、戦後、めざましい発展と変貌を遂げた。今後ますます発展していくことであろう。かつてこの地で、私たちの祖先は、労働の汗を流し、さまざまな人生を送った。私たちは、そうした過去の幾多の先人の尊い努力の上に、現在の茨木の繁栄があることを忘れてはならない。
郷土愛という言葉は、今ではあまり使われない言葉になりつつあるようだ。しかし、ひとつの家庭だけの幸福ということはありえず、私たちの幸せは、地域社会や郷土の幸せと強く結びついている。ゆえに、家族を愛する心は、そのまま郷土愛といえるであろうし、その心を国土に、世界にと広げていって、全体の幸せの中で、私たちの本当の幸せを築いていきたいと思う。
この小冊子は、郷土を愛する一人の人間が、折々に綴ったものを集めたものである。もとより拙ない文ではあるが、これが、ふるさとの姿をのちに伝えるための一助になれば、望外の喜びである。
1991年(平成 3年)11月 3日 著者記す
このたび、『郷土いばらき』を順次HTML化して公開することとなりました。増補分に関しては手書き原稿相手の作業であり、未だ写真資料も揃っておりませんので、完成までには今しばらくのご猶予をいただきたく存じます。
基本的には著者の遺稿に沿って編集しておりますので、記述内容は執筆当時のままであることをご了承ください。お気づきの点がございましたら、メール(gss042@1134.com)にて
ご批正をいただければ幸いに存じます。
当サイトの公開によって、筆者の思いが一人でも多くの方々に伝わることを願ってやみません。
1999年 2月 4日 補訂者
初版 1991年11月23日 発行
増補版 1999年 3月 6日 公開開始
著者 松岡洲泉
補訂 松岡義一(文責)
発行 暁洲舎